3Dプリンターで管理釣り場用のルアーを作る活動を始めて2年半ほどがたちました。
かなり3Dプリンターのルアーづくりが浸透してきて、3Dプリンタールアービルダーは昔に比べると着実に増えていると思います。
とはいえ、実際に3DCADでルアーを設計、3Dプリンターでルアーを製作するのはかなり敷居が高いという声をよくお聞きします。
実際CADで設計して3Dプリンターで作ってみても、思い通りに動かない釣れない・・・
というような感じでなかなか先に進まないということも多いのではないかと。
ということで、今回は、3DCADで比較的簡単にモデリングできて、ちゃんと動いて釣れる管釣りルアーということでニョロ系クランクの作り方を公開したいと思います。
極力CAD初心者でも、楽にモデリングできるように、性能に大きな影響が出ない部分はこだわらない、市販の部品で製作できる設計としました。
目次
モデリング方法
3DCADソフトのFUSION360を使用してモデリングしていきます。
個人利用なら無料で使えるCADソフトなのでおススメです。
ボディ
スケッチで画像のように曲線を描きます。
横線がボディ長さになります。今回は40mmなのでおおむね45mm程度のボディになります。
ボディ長は短すぎると設計が難しくなるので、スケッチ長さは40~55mmくらいが釣れそうなアクションにしやすいと思います。
ボディの湾曲具合は自由に設定してかまいません。湾曲具合でアクションの大きさや特性が変わってきます。
直線よりカーブをつけた方が強いアクションだったり、ロールが入ってよい感じのアクションにしやすいですが、あまり極端に曲げすぎるとセッティングが難しくなると思います。
このボディはやや湾曲が小さいのでもう少し大きくした方がアクションが出しやすくて良いかと思います。
次に、フォームモードに移行し、このスプラインで引いた曲線を選択して、「作成」→「パイプ」コマンドでパイプを呼び出します。
表示モードをスムーズ表示、終端タイプは正方形、ルアーのボディの太さを全体直径で指定します。
太さはお好みで。今回は、7mmで作っています。
次にこのパイプを変形してボディを作っていきます。
変形させる前に、「対称」→「ミラー内部」コマンドでボディの両側の面を選択して、変形する時に左右対称に変形するように指定しておくと楽です。
形状自体はお好みで良いんですが、図のように横に広く縦に狭い形状にすると安定します。
このパイプを上から引き伸ばして最大で10mm程度まで広げました。
変形させるときは、図で青くなっている線の部分を指定して「修正」→「フォームを編集」コマンドで変形させています。
真ん中を少し細くしました。テール側末端を補足絞ります。
次に横から頭部とテールの部分を少し細くなるように変形させてボディは完成です。
断面解析
ルアーのボディ断面を確認できるように断面解析を行います。
スケッチで適当な図形を描き、押し出し、新規ボディで出力します。押出し量は-1mmとかマイナスの値にします。。
押出した面を指定して、「検査」→「断面解析」コマンドを選択。図の上の円の部分の面を指定します。
するとルアーの断面が確認できるようになります。
左側のツリーに解析という欄が出て、ここで切り替えができます。
リップ基部
まず、ボディにリップの差込口を作ります。
スケッチでこんな感じに。
リップ厚さは今回は、1.7mmにしました。
角度は、ボディ底面と水平もしくは、今回のように少しだけ角度をつけると良いと思います。
スケッチで書いた四角を選んで、押し出しで切り取って、ボディに穴を開け、次に新規ボディで押し出してリップの基部を作ります。
そして、アイのワイヤーを挿し込む穴をスケッチで円を描いて、押し出しで切り取ります。
ちなみにリップの基部は、厚さを0.2mm押し出して切り取って薄くしました。
3Dプリンターの設定にも寄りますが、若干薄くすると組み立ての時に良い塩梅になります。
出来上がりはこんな感じになります。
リップ
スケッチでリップ基部のパーツの上側の面を指定して、リップをスケッチします。
ボディ幅より少し幅広に作ると良く動きます。
ラインアイを通す穴もスケッチしておくと楽です。
ラインアイの位置は、リップの真ん中か少しボディよりにするとうまく動くと思います。
あまり外側に出しすぎると、うまくいかないことが多いですが手前にしすぎても低速での性能が悪くなったりするので良い場所を探してみてください。
押し出しでリップをモデリングします。
押し出したら、図のようにリップ下側のエッジを選択して、「修正」→「面取り」コマンドを使って、リップのエッジをモデリングします。
リップが完成しました。
ベースプレート
ボディに対して垂直方向にスケッチを開き、円を作図します。
押し出しで、ベースプレートを出力。
プレートの厚さは0.5mmとしています。
フックアイ
ボディのフックアイを取り付ける箇所をモデリングします。
断面解析の画面でやるとやりやすいです。
スケッチで、円を描いて、アイの穴を開けたいところに移動コマンドで移動させて押し出して切り取ります。円の径は1mmとしてます。押し出し量は10mm程度。
日本の部品屋のベビーヒートンの一番小さいサイズ(φ1mm×長さ9.5mm)を使うことを想定して設計してます。
ウェイトホール
ボディにウェイトを入れる穴を開けます。
ウェイトの位置は、図のようにリップのラインアイとテール部の端っこの中間に設定するとアクションしやすいです。
一旦この位置で作って微調整すると楽に作れます。
この位置ですと、アクションは大人しめで安定重視になるので、位置を動かして自分好みの動きになるように調整してみてください。
円をスケッチで書いて、穴を開けるだけです。
今回は、径4mmで作りました。実際に組み立てる段階で、ウェイトを入れてみて必要に応じて径は調整してください。
これでモデリングは完了。なれるとこの程度ですと1時間程度で作れるようになります。
最後にボディ部とリップのデータをそれぞれ「修正」→「結合」コマンドで結合しておいてください。
出力
ベースプレートとリップの上側を底面に接地させて、サポートは使わずに出力します。
ベースプレートの径は、ルアーの大きさにあわせて安定して出力できるように設定します。
このモデルでは25mmとしました。
今回、ボディは内部が詰まったソリッドで作っていますので、インフィルを使ってボディの浮力の調整を行います。
これは3Dプリンターやスライサーソフトで違ってきますので何とも言えませんが、今回は外周の層が2層、インフィル15%で設定してプリントしました。
インフィルを使う場合は、ルアーの向きを調整するなどして図のようにハニカム構造が左右対称になるようにしてください。
組み立て
材料
3Dプリンターでプリントしたパーツがこちら。
材料はABSです。PLAでも問題ないです。
ベースプレートはニッパーで除去して、やすりでテール部を整えています。
穴開け
テールのヒートンを入れる穴とリップのアイのワイヤーを差す穴を1mmのドリルでさらっておきます。
リップの加工
リップの取り付け部が若干きつめの設定になっていたので、やすりで削ってちょうど良い感じにボディに刺さるように調整します。
ラインアイの曲げ加工
ラインアイは、針金を図のように曲げて作ります。
組み付け
各パーツを組み付けて、瞬間接着剤で固定して、スイムテストします。
ウェイトは交換できるように、マスキングテープで蓋をしています。
リップのアイはこんな感じ。
泳がせた時のアクションが把握できるようにマジックで塗ってます。
テールのアイは横向きでスプリットリング1個
スプリットリングはデュオの#1を使用
フックはスプーンエキスパートフック#6
スイムテスト
スイムテストした結果がこちら、スローでもファストでもしっかり泳いでいます。
慣れると一発目でこんな感じのアクションのルアーが作れるようになります。
ウェイトは、タングステンウェイトの3mmを入れるとちょうど良い浮力でした。
ウェイトは、管釣りルアーならタングステンの3mm、3.5mm、4mmの3種があれば十分だと思います。ちょうどよい浮力になるものをチョイスしましょう。
設計の見直し
スイムテストして、改良が必要であった場合、各部の設定を見直していきます。
重要なのは、必ず変更するのは1か所にすること。複数の部分を変更すると見直し後の変化がつかみづらくなります。
一つずつ調整していくのが結果として一番早く調整できます。
ボディの浮力:インフィルの設定で調整。
アクション:ボディの湾曲具合、リップのアイの位置、ウェイトの位置、リップの形状
まとめ
3DCADと3Dプリンターで誰でも簡単に作れる管理釣り場用ニョロ系クランクの作り方の紹介でした。
3Dプリンター持ってる方は是非一度作ってみてください。
次回は、組み立てたルアーのコーティングおよび塗装などの仕上げ作業を紹介します。